来週12日で癌切除の大手術から丸5年です。
当時、医師から「5年後の生存率は40%未満」と告げられましたが、良い家族、良い友人に恵まれたこと、良い病院、良い医師と出会ったことで今日があります。感謝の気持ちでいっぱいです。しかし、同時に生きる事と引き換えに多くの物を失いました。
「失ったものを数えるな」という教えもあるのですが、あえて確認のために数えてみました。結構ありますが、それ以上に得たものも多く、大きかったと思うこの頃です。
【声帯全摘】
◎声帯切除で人間としてのコミュニケーションツールである「声」を失いました。
➡それで仕事を失いました( ;∀;)
➡もし、事故、事件に巻き込まれても助けを求められません。(少し怖い。)
➡好きな歌も歌えません。カラオケ出来ません。
➡コミュニケーションは当初は筆談でしたが、今はほとんど電気人工喉頭です。
(※左・カラオケのマイク。今は右の電気人工喉頭をマイクと呼んでいます。😢)
YOUTUBE「BIGTOEとSATOの筋肉オフ会The FINAL 人口電気喉頭での挨拶」
【甲状腺全摘】
◎甲状腺全摘で毎日甲状腺ホルモン剤を飲まないといけません。
➡これは薬を毎日飲むだけなので何てことありません。
【気管摘出・永久気管孔制作・臭覚喪失】
◎鼻、口呼吸から気管孔呼吸になり「臭覚」を失いました。
➡授かった孫の赤ちゃんのいい匂い、食べ物の美味しそうな匂いがわかりません😢。
➡ガス漏れが起きていても、食べ物が腐っていてもわかりません😢。
➡おならなど悪臭がわからないという良いこともあります(笑)☺。
◎気管の大部分を失い、胸に開いた孔(永久気管孔)呼吸になったため、力む、息むことが出来ません。
(※これが気管孔。ライトで照らして覗くと、気管から気管支への分岐部が見ることが出来ます。)
➡主治医が「筋トレは難しくなる」と言っていたのは、このことだと思います。
➡10mm足らずの小さな穴ひとつなので運動するとすぐに息があがります。
◎気管孔の乾燥を防ぐため1日3~4回の「ネブライザー」による加湿が必須です。
➡健常者では、吸い込んだ空気が、鼻、口、喉を経由する時に適度な湿気を帯びるのですが、気管孔では乾燥した空気が直接、気管孔、気管支、肺にはいるので人工的に加湿することが必要になります。
➡そのため5時間以上の外出、遠出にはネブライザーが必携です。遠出、旅行の場合には、あらかじめネブライザーをかけられる「基地」(ホテル、友人宅など)を決めてから出かけます。
(※これがネブラーザーです。水、生理食塩水を霧化する装置で電源が必要です。)
YOUTUBE「気管癌手術で制作された胸の気管孔のメンテナンス」★閲覧注意★
◎気管孔から出てくる「痰処理」が随時必要です。
(※手鏡、綿棒、ティッシュは必需品です。)
➡飲み会などで頻繁に席を立つのは、歳のせいでトイレが近いこともありますが、「痰取り」のためでもあります😢
◎気管孔は口のように開閉が出来ないので、ゴミやほこりや虫が入らないように「エプロンガーゼ」や「ラリングフォーム」でカバーをします。
➡健常者のように吸い込んだものが、鼻、口、喉を経由せず直接、気管、気管支、肺にはいるので、今、流行りの「コロナ」への感染リスクも高いそうです。
でも、ノーワクでも感染したことありません( ´艸`)。
◎気管孔に「狭窄」が起こるため、24時間気管内に「狭窄防止用ステント」を挿入しているので、清潔を保つために毎日ステントを脱着して洗浄が必要です。
(※気管孔狭窄防止のためのエアウエイチューブです。自分で気管孔に合うようにカッターナイフで加工しています。)
◎胸に開いた気管孔から水が入るとダイレクトに肺に達するため溺れたのと同じ状態になりますから、水泳、湯舟に浸かることが出来ません。湯舟にはまったり、洪水に巻き込まれると死にます。
➡入浴時、シャワー時には、水が浸入しないように呼吸用の「ソフトフェイスマスク」を「パーミロール」で胸に張りつけて固定してから浴室、シャワー室に向かいます。細心の注意が必要です。入浴もシャワーも面倒くさいです。
(※ソフトフェイスマスクをパーミロールで貼り付け防水してからシャワーです。)
➡湯舟には鳩尾あたりまでか浸かれません。温泉好きだったので悲しいです。肩まで浸かりたい!!
➡癌切除手術後の入院中、主治医から「今日から下半身シャワーしてもいいですよ。」と言われたのはチューブがすべて抜けた手術から1か月以上経過してからでした。
「下半身シャワー」は初めて聞きましたが、今では生活の必需ワードです(笑)。
【両鎖骨・胸骨・第一第二肋骨切除】
残せる気管が5cm程度だったために、喉ではなく胸に気管孔を作ったのですが、それには骨が邪魔になります。手術前に主治医から「骨は戻さないのではなく気管孔を作るために戻せない。切断ではなく切除です。」と説明を受けました。
(※「骨が戻せない。切断ではなく切除です。」との説明)
「骨が無くなったらどうして体を支えるのですか?」と質問すると「皮膚と筋肉で支えます。物を持ち上げたり出来ませんが、生活は出来ます。」と言われたことを鮮明に覚えています。ボディビルダーが物を持てなくなる・・・ショックでした。
(※術後、腕を上げることが出来ず肩が痛みましたが、リハビリである程度上げられるようになりました。)
そして、今。「筋トレ」やっています。確かに骨と右大胸筋が無いのでベンチプレス、ショルダープレスなどフリーウエイト、プレス系の種目は出来ませんが、脚、背中、腕など出来る部位がありました。少ないですが出来る種目がありました。
(※公園でのメイン種目。自重でのワイドグリップチンニング。)
癌との戦いでその後も転移巣切除手術、放射線治療で入退院を繰り返していますが、出来る「筋トレ」は続けて、そこそこの体力は維持しています。医師も看護師さんも「こんなステージⅣのがん患者見たこと無い」とその体に驚いています。同年代の健常者よりも筋量は有るかもしれません。
「筋トレ」をしている時は、嫌なこと、ネガティブなことを考えないのが一番の良いところかもしれません。きっと生きている限り、1部位でも、1種目でも、1セットでも出来る事を続けるでしょう!!
今朝もいつもの朝のように「筋トレ」が出来る事に感謝しながら公園を後にした筋肉バカの「がん切除手術で失ったものと筋トレに纏わる話」でした。