「サイバーナイフ」という名前を聞いて「手術」と勘違いされる人も多いようなので放射線治療の一種である「サイバーナイフ」について簡単に説明しておきたいと思います。
「サイバーナイフ」は、「定位放射線治療」と呼ばれ、病巣周辺の正常組織への影響を極力減らして、必要な病巣部位にのみ集中して放射線を照射することができるため、より低侵襲に、より効果的な治療を行うことが可能です。
今回の私の場合、5月の半年に一度の造影CT検査の結果、右の肺の上葉、下葉に腺様嚢胞癌の多発転移が確認されました。肺転移は2020年に引き続き今回で2度目なのですが、下葉の転移巣が背中に近い奥深い所の為、手術での切除となると大きく胸を開かねばならないことから、「サイバーナイフ」での可能性を知り、神戸低侵襲がん医療センターへ紹介状を書いていただいたのです。
神戸低侵襲がん医療センターでは、CTで癌の大きさ(3~5cm程度まで)、数(3個以内)、位置等を確認して、適用ということで治療にはいりました。
肺の場合、呼吸するたびに癌の位置が変わるため、小さな癌では、癌を狙い撃ちするために鼠蹊部からのカテーテルで肺の中の癌の近くに金属マーカーを留置します。そのため3日間の準備入院が必要となります。そのマーカーを基準に移動する癌を追尾し癌を狙い撃ちするのです。
マーカー留置が終わったら、治療中に体が動かないように固定するための自分専用の型を作り、体の前、横に位置決めのための十字のマークをいれ、本番を見立てたデモンストレーションを行います。型は果物箱の果物を守る固いダンボールみたいな感じです。そして、入念な照射計画を立ててからの本番となります。
コンピュータが常に照射部位の位置を監視して、1cm以内の動きであれば、ロボットアームがこれを追尾し、多方向から放射線を腫瘍に正確に照射します。
ひとつのターゲット(癌)に多方向から照射する放射線の1本は弱いものなので周辺組織への放射線の影響を最小に抑え、放射線が集中する癌の中心では線量が最大になり癌を死滅させるのです。
1つの癌につき20グレイ×3日(3回)=60グレイを照射し、その後、一定期間ごとにCTを撮り癌の、縮小度合、放射線肺炎の発生などを観察します。