「BIGTOEの筋肉物語」発足当初の連載記事「忠さんのショートストーリー」4です。。
忠さんには複数のモデルが居ますが、写真とは関係ありません。
【Short Story 『This is CYUUSAN』】レビュー4
完全無欠の史上最強のボディビルダー忠さんを主人公にしたフィクションショートストーリー集。
★≪第十六話≫「世の中すてたもんやおまへんで」
忠さんはこの日も後輩Wを連れて車で営業の仕事をしていた。
助手席で舟をこいでいた忠さんは、突然「ボゴ・ガリ」という音で目を覚ました。Wがよく確認をせずに進路変更をしたため、右後方から来た車に接触したらしい。
「やばい!」と思ったが案の定、接触した黒のクラウンが前に出て停止した。Wもびびってその後ろに停止した。中から黒いスーツにサングラスの男が降りてきた。忠さんもちょっとびびった。
「どこ見て運転しとんや!!」「バンパーだけやったら許したろ思うたけど、ドアもいっとんのう。」男と目が合った。忠さんはちょっとちびった。
なるほど、はっきりとスジがバンパーから後部ドア、前部ドアの中程まではしっている。と、突然、後部ドアが開き親分らしき男が降り立ち、後ろから忠さんの肩を「ポン」と叩いた。忠さんは完全にちびって叫んだ。「す・すいまそん!しょんべんばちびりますたい!」
男はニヤッを笑い。「誰にもあることや。兄ちゃん、これから気いつけや。」と言い残すと車に乗り込んで車はゆっくりと発進し走り去った。
とても恐かった。でも忠さんは思った。
「まだまだ、世の中すてたもんやおまへんで。どこかの専務とえらい違いや。」パンツは気持ち悪かったが、心はさわやかだった。
★≪第十七話≫「年の瀬」
20世紀ももうすぐ終わりを告げようとしている。
忠さんがこの世に生を受けて今日まで色々なことがあった。家族のこと、コンテストのこと、友達のこと、ヨメとの出会いと別れ・・・様々なことが走馬灯のように忠さんの脳裏を駆け巡った。
今世紀最後のクリスマスもやはりヤローと2人で、ジムで過ごした。ヤローと別れたあと、屋台で一杯やって帰った。街はジングルベルが流れ恋人たちや家族づれで賑わっていた。さびしかった。
部屋の窓を開けて空を見上げると雪が舞っていた。「キレイ・・」と思った。今年もヨメは銭湯から帰ってこなかった。涙が出てきた。3匹の金魚だけが忠さんを見守っていた。
ノウテンキな忠さんとて、時にはこうして感傷的になることもあるのだ。
忠さんは容赦無く寒気の吹き込む窓を閉めて言った。
「さあ、ジム行こ!!」
今年も忠さんは除夜の鐘にあわせて108回のベンチプレスに挑戦しながら新年を迎える。
(※画像は忠さんではありません。)
忠さんは新年が「愛とロマン」にあふれた素晴らしい年になると信じて疑わない。忠さんはそういう「男の中の男」なのだ。
(※BIGTOEも野郎とクリスマスをジムで過ごす。でも忠さんではありません(笑))
★≪第十八話≫「忘れとった・・・」
忠さんはコンテストで知り合ったミス・フィットネスのYUKIさんに一目ぼれしてしまった。こっちは万年予選落ち、相手はミス・フィットネス。
忠さんは、自分も恥ずかしくない結果を残そうとトレーニングに励んだ。プロポーズしようにも予選落ちではバランスがとれないと思ったのだ。
今の自分には高嶺の花。チーティングカール、チーティングプレス、チーティングベンチプレスと猛トレーニングに励んだ。
サプリメントも摂った。プロンテに加えてマルチビタミン、アミノ酸、グルタミン、アニマリン、ナフタリン、クレアチン、アカチン、ヨーチン、フルチン・・・体に良いと聞いたものは何でも飲んだ。ジムの会長が「忠さん、ビタミンCやで!!」と言うので毎日レモンを50個食べた。
その甲斐あって、体はグングン大きくなった。何が効いたのか忠さんにもわからない。
ダイエットにも耐えた。ササミと野菜とビタミン剤を飽きるほど摂った。L-カルニチン、BCAAも摂った。サプリメントをこんなに摂ったのは、初めてだ。ひもじい時はトマトとダイエットコークで腹を膨らませた。
コンテスト2日前、カーボアップとばかりにバナナを50本食べた。前日、バナナを100本食べた。むろん忠さんはカーボアップなどという言葉の意味など知らない。忠さんのビルダーとしての本能がそうさせるのだ。
当日朝、ボリューム感が出てきて、おまけにバリバリだーっ!!よせばいいのに、すぐ調子に乗るのが忠さんの良いところ? 駄目押しとばかりに150本のバナナを食べた。途中、喉が詰まりそうになったので、ちょっと古いが冷蔵庫に残っていた牛乳を1リットルばかり飲んだ。
ちょっとすっぱかったが、気にしない。今まで期限切れの牛乳を何度も飲んだがあたったことがないのだ。
それに牛乳の腐ったのがヨーグルトだと信じて疑わない。
これで完璧や!! 心底そう思った。
忠さんの思惑通り、会場は忠さんの体にどよめいた。余裕の決勝進出だ。誰もが忠さんの優勝を信じて疑わなかった。
しかし、ついに忠さんは決勝の幕があいたステージにその勇姿をあらわすことはなかった。
その頃、忠さんは会場のトイレの一番奥の個室で冷や汗を流していた。不覚にもこの大切な日に生まれて初めてあたってしまったのだ。
「無念の決勝欠場!」
それとともに忠さんの1年越しの恋も告白することなく終わった。
トイレの中で忠さんは思った。
「ヨ・嫁がおるの忘れとった・・・・」
(注)ナフタリン、アカチン、ヨーチン、フルチンはサプリメントではありません。食べられません。念の為・・・。
★≪第十九話≫忠さん危機一髪!!「忠さんVSチューさん」
忠さんがいつも通りトレーニングを終えて帰ってきてアパートの玄関のドアを開けたとき、(このアパートは玄関のドアを開けると半畳ほどの土間があり、すぐ2階への階段が続く構造になっていた。)正面の階段のちょうど目の高さあたりに1匹のネズミが居るのに気がついた。
一瞬目が合い、「なんやねん!」と思った瞬間、ネズミも「なんやねん!」とばかりに、いっきに階段を駆け降り、忠さんのバギーパンツのすそから中に入り込み、脚を駆け登った。
さすがに男の危機を感じた忠さんは、モモの付け根あたりでネズミを食い止め、思いっきり掴んだ。「チュ~~!」危機一髪!!掴んだまま、玄関先でパンツを脱ぎごみ箱に捨てた。脚を見るとクッキリとネズミが駆け登った足跡がついていた。
忠さんは「男の大事なもの」を死守した安堵感に包まれ涙した。
そのネズミの生死は確認されていない。
これホントにあった話。
★≪第二十話≫「まあた、やられた!」
例年通りコンテストに向けて減量に入る4月。忠さんはジムで出会った黒のトレーニングウエアに黒のキャップ、黒のサングラスと言ういかにも怪しげないでたちの男に「ええ、減量用のサプリメントがあるんやけど買わへんか?安うしとくでえ。」と勧められた。
「へえ、そんなもんあんの? ひょっとしてまたFATエレキバン?・・・」 去年の今ごろ白のウエアに白のキャップ姿の男に勧められたのである。脂肪を落としたい部分に貼るだけでたちどころに脂肪が落ちるという説明をすっかり信用して5万円で買ってしまったのだ。減量に苦しんでいた忠さんにとって彼は白衣の天使に見えた。効果??貼ったところにあせもができ、皮膚がかぶれただけだった。
「ちゃう、ちゃう、ええ話や。そんなまがいもんと一緒にせんといて。これは中国古来の漢方薬と西洋医学の集大成ともいえる代物や。あのシュワちゃんも使うとるんやで。買って後悔させまへん!」というわけで、またまた5万円で買ってしまった。
早速、その日から使い始めた忠さん、翌日からひどい下痢に見舞われた。それでも人を疑うことを知らない忠さん、そのまま、通常の倍位の量をのみ続け、すっかり痩せてしまった。やっと「へんやな?」と気付き、知り合いの医者に見てもらったら、それはただの下剤だった。
「ま・また、やられた!」
忠さんは人を疑うことを知らない。よく言えば純真、悪くいえば「アホ」である。
さて来年は何色のウエアを来た男に騙されるのやら・・・。
(忠さんからたまには真面目なアドバイス)
もう3月、早い人ではコンテストを目指してそろそろ減量などと考えている方もおられると思います。順調にバルクアップはできましたか?
忠さんからのアドバイスを・・・・
①減量は余裕をもって、時間をかけてやりましょう。
②減量はコンテストの1ヶ月前に完了、あとは微調整、コンディショニングの期間と考え、それから逆算して始めましょう。
③減量幅は2週間に1キロ(1週間に0.5キロ)以内にしましょう。これ以上早いと筋量を犠牲にする恐れがあります。
④使用重量の下降=筋量の減少の信号と考えて、こんな時は炭水化物を少しづつ増やしてみましょう。
⑤減量が順調なら1週間に1度は好きなものを自由に食べる日をもうけましょう。ストレス解消、カロリー不足気味の体を癒す効果があります。
最後に商魂逞しい人の販売する怪しげなサプリメントに注意しましょう。
僕みたいになるかもしれません。ドーピングで引っかかるかもしれません。
ビルダー以外の真夏のビーチを目指している人、少し太目のおねえさんもそろそろ始動してください。
では、健闘を祈ります!!(忠さん)