「BIGTOEの筋肉物語」発足当初の連載記事「忠さんのショートストーリー」。こんなくだらない話を考えて書いていたのですね。
(※忠さんには複数のモデルが居ますが、写真とは関係ありません。)
【Short Story 『This is CYUUSAN』】レビュー2
完全無欠の史上最強のボディビルダー忠さんを主人公にしたフィクションショートストーリー集。
★≪第六話≫「水溜まり」
忠さんは洗面器を片手に近くの銭湯にむかっていた。その夜は雨上がりであちこちに水溜まりができていた。「水溜まりに足つっこんだらえらいこっちゃ。」足元を注意しながら風呂への道を急いだ。
前方に大きな水溜まり発見。忠さんはそれを飛び越えようと日ごろスクワットで鍛えた自慢の脚で思いっきりジャンプした。・・・・・・・と、その瞬間。
「ばこ~~~ん!」目から火が出て、激痛がでこに走った。
水溜まりの上にあった看板が大きく凹みゆれていた。
額から一筋の血が流れた。
★≪第七話≫合コン「そ、そんな・・・」
忠さんが花の大学生だったある春の日。場所は千里に近いある公園。今日は待ちに待った合同コンパの日。
こちらは8人、相手は某女子大学の8人。選り好みしなければ、1人は当たる計算だ。
この男子学生の8人は2つの派閥から成っていた。ひとつは忠さん派、もうひとつはキザ男速水のグループだった。この速水クン、男からみればキザでいやなヤローだが、こういうのに限ってやたら女にもてる。硬派忠さんにとっては最もいやなタイプだった。それに加えて、共に寮生活をしている仲間ではあるのだが、日ごろから女の子からかかってくる速水くんへの電話の取り次ぎばかりをやらされている忠さんにとってはにっくきライバルだったのだ。(少なくとも忠さんはそう思っていた。)
「ボートに乗りたいね」女の子たちが集まって話しているのを偶然に耳にした忠さんは、今こそ日頃ベントオーバーローイングで鍛えた腕の見せ所、「これなら速水に勝てる」と張り切った。
ランチタイムが終わり待ちに待ったフリータイムだ。
「ボートに乗りたい人、こっちにあ~つまれ。」忠さんは片手を挙げて声だかに叫んだ。女の子たちが振り向いた。「しめた!」と思ったその直後。
「喫茶店組こっちだよ!」と速水クンが手を挙げた。
女の子たちは、いっせいに「は~い」と言って速水クンに群がった。
片手を挙げたままの忠さんだけが、その場に取り残された。
そう、忠さんの仲間までが、速水クンのおこぼれにあずかろうと行ってしまったのだ。
「そ、そんな・・・」忠さんの目は点になっていた。涙が出てきた。
★≪第八話≫「ダブルデート」
連れのデートに同行することになった忠さん。彼女が友達を連れてくるから、その子の面倒を見てやってほしいというのだ。つまりダブルデートだ。
京都の四条河原町の待ち合わせの場所に行くと、間もなく向こうから2人ずれの女の子がやってきた。
ひとりはフツーの子、もうひとりはすごい美人だった。連れは挨拶もそこそこに美人の手をとって歩き始めた。忠さんもフツーの子と後に続いた。哲学の道、映画、喫茶店・・・デートは無事終わった。でもこころなしかフツーの子は怒っているようだった、涙ぐんでいるようにも見えた。
女の子と別れての帰り道、連れが言った。「忠さん、お前あの子とつきあえや。面倒みたれや。」
「えっ、どういうこと?」
忠さんは、そのフツーの子が連れの彼女だったことをその時初めて知った。 心が痛んだ。
★≪第九話≫「トイレ」
忠さんの自慢は怪力である。
ジムにはトイレがひとつしかない。つまり、男女別に分かれていなかったのだ。そこで悲劇は起こった。
忠さんはトレーニング前に、トイレに行く習慣があった。その日もいつも通りトレーニングウエアに着替えるとトイレに向かった。
忠さんがトイレに入っていった直後のこと、「キャーツ!!」という女性の叫び声がジムにこだました。無残にトイレのカギは吹っ飛んでいた。忠さんの目は点になっていた。何の悪気もない。ただ、忠さんの「怪力」と「ノックをしないクセ」がこの悲劇を呼んだのだ。
カギはすぐに修理されたものの、この悲劇はその後二度程繰り返された。
忠さんに尻を見られた被害者約3名。 (内、男1名!)
(※忠さんが3回ぶち壊したトイレの鍵)
★≪第十話≫「金属疲労」
忠さんの自慢は怪力である。
大阪広しと言えども、80キロのバーベルでチーティングスコットカール?が出来るのは忠さんくらいのものであろう。このジムのスコットベンチは床に固定されていて、ポールの上にアームボードがついているタイプである。
この日も忠さんは、いつもの通り5時30分キッチリにジムに現われトレーニングを始めた。
チーティングベンチプレス、チーティングバックプレス、チーティングトライセップス、チーティングカール。忠さんはチーティングが好きである。チーティングに「ズルをする」という意味があるのを、忠さんは知らない。
そして、チーティングのことを「チンニング」と言う。ではチンニングは?やはりチンニングである。
トレーニング開始後30分ほどたった頃、突然ジムの奥から「グワッシャ~ン!」というけたたましい音が響いてきた。
会長が駆けつけると、スコットベンチのポールは忠さんのチーティングスコットカールによる金属疲労に耐えられず、無残に根元から折れて倒れていた。
バーベルを握ったままの忠さんも気を失って倒れていた。
会長は叫んだ。「えらいこっちゃ。はよ、修理屋呼べ!!」